連作小説集『素敵なところで会いましょう』の5編には、自分の死を目の当たりにして初めて真正な無の世界に至る、生の最後の瞬間が込められている。一瞬のすれ違いで互いの人生が絡み合う登場人物たち。生が一つ一つ大事でないはずがないように、一つ一つの死も苛酷でないはずがない。作家は、この死の瞬間が伝える悲しみを壮絶かつ繊細に描写している。そうやって書かれた重みのある文章は、皮肉にも生気に満ち、リズム感さえ帯びていて、心に十二分に響いてくる。そうして読者は、イ・ユリの小説に惚れこんで期待する理由を再確認する。「楽しくも悲しくもない、生きることだけで精一杯の日々」(「9回目の人生」)を生きた主人公は、最後には死に直面する。そこには懐疑と虚しさが待ち受けているが、読者は希望を掬い取ることができる。
永遠でも完全でもない生の裏道に思いを馳せながら、イ・ユリの小説でしか味わえない多彩な可能性を見つけ出してほしい。
【著者紹介】イ・ユリ(이유리)。2020年 「京郷新聞」の新春文芸で短編小説『赤い実』が当選し、執筆活動を始める。短編集『ブロッコリー・パンチ』『すべてのものの世界』などを執筆。