
80年生まれの著者が若くして文壇を席巻し、
同世代から圧倒的な共感を得たデビュー短編集
臨月の母を捨て出奔した父は、私の想像の中でひた走る。今まさに福岡を過ぎ、ボルネオ島を経て、スフィンクスの左足の甲を回り、エンパイア・ステート・ビルに立ち寄り、グアダラマ山脈を越えて、父は走る。蛍光ピンクのハーフパンツをはいて、やせ細った毛深い脚で――。
若くして国内の名だたる文学賞を軒並み受賞しているキム・エラン。韓国日報文学賞を歴代最年少で受賞した表題作や、第1回大山大学文学賞を受賞した「ノックしない家」など9編を収載したデビュー作。
「この本は、こわばった表情で私があなたに送る、最初の微笑みです」