
詩人オ・ウンの6番目の詩集『無の代名詞』。
詩人の眼差しは「それ」が「あった」場所にとどまる。「そこ」に何もなくても「目に見えないのであって存在しないわけではない」とオ・ウンは語る。「‘ない’と‘あった’の間の時差と隙間を埋めるものが私たちの悲しみ」(オ・ヨンギョン文学評論家)という解説は、この詩集の本質を正確についている。失ってしまい、今ここにないものを代名詞で呼ぶこと。詩人が使う代名詞は、失ったものの「代わり」をするのではなく、失ったものを今ここに「再び」存在させるものだ。
【著者紹介】オ・ウン(오은)。1982年に韓国全羅北道井邑市に生まれ、ソウル大学社会学科を卒業後、KAIST文化技術大学院で修士号を取得。2002年に『現代詩』で詩壇にデビュー。詩集に『ホテルタッセルの豚たち』『私たちは雰囲気を愛してる』『有から有』『左手は心が痛い』、散文集に『君と僕と黄色』がある。邦訳詩集に『僕には名前があった』(吉川凪訳、クオン)。詩誌「作乱【チャンナン】」で活動中。