日本でも大人気の作家チョン・セランさんをお迎えして、インタビューとクイズでチョン・セランさんの魅力に迫るトークイベント。9年ぶりの来日となった今回、開場前からたくさんのファンが列をつくり、会場はファンの熱気に包まれていました!司会は”ゆうきさん”の愛称でおなじみの帝塚山学院大学准教授、稲川右樹さん。
チョン・セランさんが語る日本の印象
会場の皆さんからの「オソオセヨ!(いらっしゃい!)」の掛け声で登場したチョン・セランさん。日本にも何度も訪れたことがあるというセランさんに、まずは日本で特に印象深かったところを尋ねると「文化財が好きなので京都が好き。都市も好きで、特に福岡は食事の量が多くて嬉しかった」と満面の笑みを浮かべたセランさん。
特に甘いものに目がないそうで、イベント前夜の食事の席では満腹だったために食後のデザートを断ろうとしたものの、デザートがプリンだと知ると「プリンは食べなくちゃ!と、食べてしまった」というエピソードを披露。会場は笑いに包まれ一層和やかなムードになりました。
大勢の日本のファンを前にした感想を聞かれると「海外文学の読者はどの国でも本を読む人全体の1割ほどだと聞きます。今日はこんなにたくさんの方々が来てくださって、あたたかいおもてなしを受けている気分」と語りました。
さらに、「日本を舞台にした作品を書くとしたら、どんなジャンルの作品を書くか」という問いには「まだ日本語には翻訳されていないが、昨年から680年頃を舞台にした歴史推理小説シリーズを執筆中です。当時も韓国・中国・日本の交流が盛んでした。主人公が日本に使節団の一員として来たり、また日本からも使節団が派遣されてきたりといった交流の話をぜひ書いてみたい」と語りました。
チョン・セランさんに関するクイズ大会!
明るく元気な声ではきはきと質問に答えてくださる様子を見て、会場の皆さんがセランさんの魅力にどんどん引き込まれていきます。そしてここからクイズ大会へ!ゆうきさんがセランさんに関するクイズを出題し、セランさんがその場でホワイトボードに答えを書いて会場の参加者が答えます。正解者にはセランさんの直筆サイン入り缶バッジのプレゼントが渡されました。
「セランさんが子供の頃になりたかったものは?」「好きなゲームは?」「一番好きな乗り物は?」「苦手な食べ物は?」「1日のうちで好きな時間帯は?」などさまざまなクイズが出題されました。意外だったのは、「もし一日だけ動物になれるとしたら?」というクイズ。答えは「ペリカン」でした。なんでも口に入れてしまう図々しさや強そうなところが魅力的なのだそう。ゆうきさんの明るいリードと楽しいセランさんの回答に、会場は大盛り上がりでした。
会場やオンライン参加者からの質問タイム
クイズ大会の後は、会場やオンラインで視聴している皆さんから、作品や執筆についての質問を受け付けました。
「作家として幸せを感じる瞬間は?」という問いに対して、チョン・セランさんは「本を読んだ後で家族や友人たちと本のことについて話した、という話を聞いたとき。本が閉ざされたものではなく、対話が広がるものだと実感して幸せを感じます」と答えます。
次の質問は、「最新作はミステリーだが、ミステリーを選んだことは暴力の問題と関係があるのでしょうか?」というものでした。
「これまでミステリー作品はあまりないのですが、ミステリーが好きで読者として多くの物語を読んできました。ミステリーには暴力もあるが同時に正義もある。問題が生じたときに放置せずに解決していこうという動きも描いています」
『フィフティ・ピープル』に関する「さまざまな人物が登場するが、年代や性別が違う人たちをどうやって描いているのでしょうか」という質問に対しては、「自分と似ていない人を書くというのが本当に一番難しい」と回答。「普段から交通機関や公共の場所で、人々はどんな音楽を聴いて口ずさむのか、流れてくるニュースにどんな感想をつぶやくのかなど、その行動をしっかりと時間をかけて注意深く観察しています」と語りました。
その他、翻訳や装丁など多くの質問に丁寧に回答したセランさん。最後に日本の読者へのメッセージで締めくくりました。
「K-BOOKフェスティバルに参加した作家から『とても良い経験だった』と聞いていて、参加したいと思っていました。今回来てみて本当によかったです。今日のことを大切に思い出しながら、今後の励みにして一生懸命がんばりたいと思います」
やさしい登場人物たちが奮闘しながら前向きに生きていく心温まるストーリーの数々を多く紡ぎ出しているチョン・セランさんはどんな声で話すのだろうと思っていました。実際に目にしたセランさんはとても明るくはつらつとしていて、同じ空間にいるだけでとっても元気がもらえるような不思議なパワーをお持ちでした。普段は文章でしかお会いできない作家さんの生の声を聞くことは、想像を超えるとても新鮮な経験でした。
セランさんが好きなものを語るチャーミングな姿と、作品について語るときの真剣な眼差しにすっかり魅了された私。もっともっと知りたい!1時間じゃ全然足りなかった!続きは『ちぇっくCHECK+ 創刊号: まるごとチョン・セラン』を読んで、ひとりムフフと楽しむことにします。次の来日が早くも待ち遠しいです。
(レポート:高上由賀)
当日の様子は以下から視聴できます。