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2021.12.06
サテライトイベントレポ:『真夜中のちいさなようせい』翻訳出版記念イベント

いま、韓国の絵本が世界中から大注目されています。
手にした人の顔を思わずほころばせるかわいいキャラクターの絵本、美しく繊細で芸術的な絵本、エッジのきいたデザインが胸にささる絵本…… こどもから大人まで、読者の心をわしづかみにする魅力にあふれる絵本ばかり。いままさに世界中が空前の韓国絵本ブームです。
そんな最中、6月に翻訳出版された絵本『真夜中のちいさなようせい』(絵と文:シン・ソンミ、訳:清水知佐子)も、原書は韓国の出版社「チャンビ」から出版された絵本でした(原題『한밤중 개미 요정』)。

この絵本が大好きなポプラ社社員が集まって、「作者のシン・ソンミさんやチャンビの編集者から話を聞きたい!」「その話を読者のみなさんといっしょに聞く時間がつくれたらすてき!」と、話がはずみ、韓国・チャンビと日本・ポプラ社をオンラインでつないで交流するライブ配信イベントの企画が立ち上がりました。

イベントの企画当初は、やりたい思いは強いけれど、開催の方法やかたちもまるでわからず、「道のない原野で夢を語っているだけ」のようなものでした。そんな時に紹介してもらったのが「K-BOOKフェスティバル2021 in Japan」。これで枠組みも決まってあとは突っ走るのみ!というわけで、着々と準備を重ねていったのでした。

そして迎えた本番当日。『真夜中のちいさなようせい』原作の編集を担当されたソ・チェリンさんと中継をつなぎ、日本語版で編集を担当した弊社社員・小櫻、翻訳を担当された清水知佐子さんとのトークが繰り広げられます。そのお話は、企画実現に至るまでの苦労などすべて吹っ飛んでしまうくらい、聴きごたえのある内容が盛りだくさんでした!

シン・ソンミさんが2006年から描く「ちいさなようせい」シリーズ。その担当編集であるソ・チェリンさんがシン・ソンミさんの作品と出会ったのは、偶然にもとある日本食料理屋さんでのこと。そこで目にしたハガキサイズの絵に心を奪われ、帰宅するやいなやシン・ソンミさんについて、過去の記事などを調べてみたそう。そうして、彼女の作品一つ一つには、ストーリーが込められているのだということを知ります。絵本をつくるにあたり、いつも文学性と芸術性を併せ持った作品をつくろうと努力しているというソ・チェリンさんにとって、運命の出会いでした。

早速、ソ・チェリンさんが絵本の出版についてご本人に相談してみたところ、シン・ソンミさんにも、ご自身が持っておられるストーリーやナラティブを発表したいという気持ちがあったそう。それに、東洋画と聞くと山水画や水墨画を思い浮かべがちですが、シン・ソンミさんの描くような “伝統的でありながらも華やかな彩色画” もあるのだということを、より多くの人々に知ってほしいという気持ちから、快くお引き受けくださったんだそうですよ。「ちょうどそのころ、シン・ソンミ先生が5歳の息子さんの育児を経験されていて、絵本にとても親近感を持っておられたということもあり、様々な要素が重なって運よくお引き受けいただけました。」とソ・チェリンさんは話します。

このお話を聴いていた小櫻は「タイミングとタイミングがガチッと合って、編集者と作家が幸せな出会いをして、絵本が生まれる。奇跡のようなものだけれど、その軌跡を追いかけながら、私たち編集者は本を作っているのかな。絵にストーリーを感じる。だからこそそれを絵本にしたいという気持ちは、私たち日本の編集者も同じかなと思います。」と語りました。

そして、翻訳を担当された清水さんからはこんなご質問が。「原書のタイトルを直訳すると “真夜中のアリのようせい” となるのですが、これについては小櫻と、”アリ” というのが少し読者にとってわかりづらいのではないかという話をしました。(そういう理由から日本語版では “ちいさなようせい” としましたが)韓国語で “アリのようせい” という言葉には、何か特別な意味が込められているのでしょうか?」

これについてソ・チェリンさんは、「そうなんです。実は、韓国でも “アリのようせい” という言葉はあまりなじみのないもので、他の名前にしませんか?というご提案もしていたんです。しかし、シン・ソンミ先生としては、長い期間 “アリのようせい” シリーズとして作品を描いてこられたためにそれは捨てられない、ということで私たちも納得してそのまま採用しました。」シン・ソンミさんが、アート作品としてこのシリーズを手掛けられてきたからこその、こだわりと愛情が込められたネーミングだったんですね。

ところで、絵本の原画はふつう実際と同じか、少し大きめに描くことが多いそうですが、なぜシン・ソンミさんは、子どもの背丈ほどもある大きなサイズの原画を描かれるのでしょうか。なんと『真夜中のちいさなようせい』に使われている絵の原画は、ほとんど1メートルくらいの大きなものなので、スキャンできずに写真を撮ってそのデータで絵本を作ったというから驚きです。最初は、ソ・チェリンさんも、原画をそんなに大きく描かれなくても大丈夫なので、小さく描いてくださいというふうにお願いしたそうなのですが、シン・ソンミさんは「子どもの絵本だからといって、手を抜きたくない」とおっしゃって、他の作品を描くのと同じように、大きな原画を描いてくださったんだそうです。

そして、もし子どもたちが大きな原画を目にした際に、また違った感じ方ができる機会をつくってあげたい、そうおっしゃったんだとか。そんなシン・ソンミさんの姿勢については、美術界からは心配の声も上がりました。彼女の絵が多く出回ると、作家の価値、作品の価値というものが落ちてしまうのではないだろうか、と。しかし、それでもシン・ソンミさんは、「自分がこれまでやってきたとおりに作業したい。そして、多くの子どもたちに見せてあげたい」というふうにおっしゃったそうです。「子どもたちへの想い、読者への想いがすごく伝わってくるエピソードで、素晴らしいなと思います」と、同じく子どもたちに絵本を届ける作り手の立場から、小櫻も感銘を受けていました。

ここまで、『真夜中のちいさなようせい』にまつわるエピソードを少しだけお届けしてまいりましたが、イベント本編ではシン・ソンミさんが絵を描かれる課程も、貴重な写真と動画満載でお送りいたしました。さらには、ソ・チェリンさんが勤められている出版社・チャンビのオフィスや、観光客が気軽に立ち寄れる施設の様子もたっぷりご紹介。これでまた、次回韓国を訪れたときの楽しみが増えた!と、明るくポジティブなコメントをたくさんいただきました。

こちらのイベントの模様は、残念ながら現在はアーカイブ配信等でご覧いただけないのですが、またみなさまにご覧いただける機会ができましたらお知らせいたします。それまでの間、絵本『真夜中のちいさなようせい』をじっくりじっくり味わって、お待ちいただけましたら幸いです。それでは、またどこかでお会いしましょう!

(レポート:ポプラ社石川琴乃)

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後援:一般財団法人日本児童教育振興財団、
韓国文学翻訳院、株式会社クオン