私たちの目には見えないけれど、私たちの頭上には巨大な耳のようなものがある。どんな些細でとるに足らない言葉でも、私たちのその言葉をその耳はみんな聞いてくれる。(…中略…) だけど、そんな耳があるから、深夜私たちがめいめいつぶやく独り言は寂しくも悲しくもないのだ」(「深夜、キリンの言葉」より)
2009年李箱文学賞受賞作「散歩する者たちの五つの楽しみ」、2012年、2013年、現代文学賞候補作の「僕がイングだ」と「青色で僕らが書けるモノ」を含む11の短編小説が織りなす過去と現在、生者と死者を見つめるキム・ヨンスの世界。他者とわかりあうことのない世界へのほんの少しの希望と未来の11の形。