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2021.12.03
イベントレポ:イ・ランが歌う、語る「今、この時」

シンガーソングライター、作家として日本にもファンの多いイ・ランさんのミニ・ライブと、映像作家、中村佑子さんのお二人が「今、この時」を語るトークイベントが、K-BOOKフェスティバルの5日目、オンラインで行われました。

ライブに先立ち挨拶に登場したイ・ランさんは、深紅のセーターとアシンメトリーに結んだヘアスタイルで、写真よりずっと柔らかく穏やかな印象。ろうそくの灯と電球がたくさん浮かんだ部屋で、ギターを弾きながら静かに歌い始めました。
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1曲目は、「よく聞いていますよ」。パンソリ(韓国の口承芸能)のウサギと亀の物語と、友人の病気の話を織り交ぜた独特のストーリーと耳に残るメロディ。「私と友人の物語も末永く口承されることを願ってこの曲を作った」そうですが、この一曲でイ・ランさんの世界にすっかり魅了されてしまいました。

続いて、苦しみを抱えた人たちを歌った「ある名前を持った人の一日を想像してみる」。 3曲目の「イムジン河」を日本語で歌う姿には強い想いが伝わってきます。最後に、眠れない苦しみを歌う「意識的に眠らないと」では、「イ・ラン、何年こうしているの」という言葉が胸に刺さります。痛みや苦しみも言葉にして聴かせるイ・ランさんはどんな本を書くのでしょうか。

ここで中村佑子さんが登場。お二人は以前から個人的な交流もあると言い、『マザリング』(集英社)の中では、イ・ランさんへのインタビューをもとに「脱コルセット」という章が書かれたそうです。脱コルセットとは、フェミニズムの動きの中でコルセット(=先入観や既存イメージ)を脱ぎ捨て、自由になろうという動きを指します。

他にも母親のことなど多くの話をしたそうですが、イ・ランさんは出産を「再生産」と呼び、「母にならない」と決めていると言います。「私たちはさまざまな問題を次の世代に押しつけたまま、ただ去っていくわけにはいかない」と。そして、最近、第二子を出産したばかりの中村さんに、「なぜ何人も子どもを産むのか。長女を育てながらどう感じたかのか聞きたい」と問いかけました。もちろん、けんか腰ではなく率直に今の考えが聞きたいというトーンなのですが・・・いかにもストレートに意見交換をする文化。そんな質問を予想していたように、中村さんの返答も実に正直で毅然としていて、お二人の強さのようなものが感じられる素敵な対話でした。

作家イ・ランさんの作品は、2021年10月に出版された『話し足りなかった日』(リトル・モア)をはじめ、『悲しくてかっこいい人』(リトル・モア)、『私が30代になった』(タバブックス)、『アヒル命名会議』(河出書房新社)の4冊を日本語で読むことができます。

また、11月中旬に日本でリリースされる3rdアルバムのライナーノーツを手がけた中村さんが、曲を聞いて「労働歌だと思った」と話すと、「韓国ではそれは民衆歌手というかな。アルバムの中の曲をすごく洗練された民衆歌謡として作ろうと思った」とエピソードを話しました。

他にも、殺人事件の追悼集会で歌った話、日韓の書名がまるで違う話、作品がどのように生まれるのか・・・等々、創作に関わる話は続きます。作品を生み出すため常に頭を動かしているせいで睡眠障害はつきものだといい、中村さんもそれに共感していたのが印象的でした。

最後に、お二人は「いつか一緒に映画シナリオの作業もしてみたい」「またすぐ会えると信じています」と締めくくりました。 11月末に韓国で発売されるイ・ランさんの本が来年、日本でも翻訳出版予定とのこと。海を渡って人に会いに行くのはまだ少し先のことになりそうですが、「今、この時」を伝える本や音楽はすぐ手元にやってくる時代であることが幸いに思えるイベントでした。

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(レポート:湯原由美)

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