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2023.12.13
【イベントレポ】『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』著者ファン・ボルムが伝える「よく読み、よく休むこと」
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』著者ファン・ボルムのイベント

韓国で累計25万部を突破し、待望の邦訳が出版された『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者、ファン・ボルムさんのトークイベントが開催されました。
本作はヒュナム洞書店を舞台に、さまざまな悩みを抱えるどこにでもいそうな人々の姿を、あたたかい視線で描いている物語です。韓国だけでなく日本にも共通している働くことと生きづらさの問題に対して、休むことの豊かさを伝えてくれる小説でもあり、多くの書籍が登場する読書ガイドでもあります。
今回は、本作の編集を担当した佐藤香さんがインタビュアーとなり、著者ファン・ボルムさんが作品に込めた思い、「よく読み、よく休むこと」について語りました。会場は立ち見も出るほどの熱気でした。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』執筆の裏話

書店を舞台にした小説を書いた経緯について「自分の好きなものがたくさんつまっている小説を書きたかった。本のある空間、本や本を読む人、その人たちが交わす会話。それらが集まっているところは書店だった」と語るファン・ボルムさん。登場人物について聞かれると、「特にモデルはいませんが、書き終わってみると何人かの登場人物は私自身の特徴や考え方が反映されていることに気づきました」と答えました。

さらに、好きなストーリーについて聞かれると、次のように語りました。「私自身にも起こりそうな物語を描いている日常に密着したストーリーが好きで、登場人物と自分を重ね合わせて、自分ならどうするかなと想像するんです。悩んだり、悩みを克服したりする姿を、作家が愛情あふれる視線で見つめていると感じます」

イベントのタイトルでもある、「よく読むこと」について、いくつかの質問がありました。ファン・ボルムさんの好きなジャンルは小説で、ひと月に5~10冊ほど本を読むとのこと。読書スタイルについては「好きな作家の新作や、知人がSNSで勧めている本をオンライン書店で買う。同時に数冊の本を読み進めるスタイルで、テーブルの上、ソファの脇、バッグの中にそれぞれ別の本があります」と話しました。神保町にあるカレーの人気店で、順番待ちをしている間にもバックの中の本を読んでいたそうです。読書時間の確保が難しいと悩んでいる人たちには、隙間時間に読むことを勧めました。

きちんと休み、社会や自分の変化を受け入れることが大事

「休むこと」については、「きちんと休むことは、自分の身体や精神状態について鈍くならないように点検することだと思う」と話し、自身も燃え尽き症候群になった経験があると明かしました。おすすめの休息スタイルは「散歩」。週に5~6回家の前にある公園を、音楽も聴かずに思い浮かんだことを考えながら、一時間ほど歩いているそうです。

また、「自分らしく生きよう」という一種の社会的な圧力があるが、という佐藤さんからの問いかけに対しては、次のように答えました。
「『自分らしく生きる』という言葉は、韓国では肯定的で前向きな言葉だと捉えられている。けれど私は『自分らしく生きる』ことが虚構の枠組みのように思えて、よくわからない。だから自分が書く文章の中には登場しません。世界は変わるし、自分も変わっていくもの。『自分らしく生きなければ』と思うより、社会や自分の変化を見逃さないようにして、受け入れていくのがよいのではないでしょうか」

最後に、会場からの質問に答える形で、「執筆場所は本と机とパソコンしかない自宅にある書斎。音楽もかけずに静寂の中で、その日の体調に合わせた飲み物を飲みながら執筆します」と執筆スタイルが明かされました。

作品と同様、温かく穏やかなファン・ボルムさんの人柄が、丁寧な受け答えから伝わってきました。韓国で既に刊行されているエッセイが、日本語で読める日が待ち遠しいです。
(レポート:田野倉佐和子)

当日の動画は以下のリンクから視聴できます

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共 催:⼀般社団法⼈ K-BOOK振興会、韓国国際交流財団
主管:K-BOOKフェスティバル実⾏委員会
後援:⼀般財団法⼈ ⽇本児童教育振興財団、
韓国⽂学翻訳院、韓国出版文化産業振興院、
駐日韓国大使館 韓国文化院、李熙健韓日交流財団、
アモーレパシフィック財団、韓流 20 周年運営委員会、
永田金司税理士事務所、ソウル市場、
株式会社国際エキスプレス、株式会社クオン