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お知らせ
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2020.12.02
イベントレポ:第12回K文学レビューコンクール授賞式

2020年11月28日(土)・29日(日)の2日間にわたり「K-BOOKフェスティバル 2020 in Japan」がオンライン開催されました。第1回目の昨年は会場に行くことができず残念な思いをしましたので、今年はオンライン開催ということで非常にありがたかったです。
2日間、ほぼ全プログラムをパソコンで流しながら過ごしました。今回はその中から28日(土)13:30-14:00に行われた「第12回K文学レビューコンクール授賞式」についてレポートしたいと思います。

今年のK-BOOKフェスティバル開催を知ってから当日までの間、プログラムや参加出版社をチェックしながら楽しみに待っていました。その中でこの「K文学レビューコンクール」の存在を知り、事前に少し調べてみました。2009年に「韓国近代文学作家「李箱」文学を読むコンテスト」として第1回目が開催され、2010年から2018年までは「韓国文学読書感想文コンテスト」として続いてきて、2019年にK-BOOK振興会主催、韓国文学翻訳院後援で「K文学レビューコンクール」として第12回目が開催されたという歴史を持っているコンクールでした。「韓国文学読書感想文コンテスト」はなんと世界18カ国で開催されているそうです。日本語で読める韓国文学が増えてきたのはここ数年という気がしていたのですが、もう10年以上前から韓国文学を日本の読者に届けるために尽力されてきた方々がいらしたのだなあと感慨深い気持ちで過去の課題図書などを見ていると、2011年の第3回目の課題図書が『菜食主義者』でした。今年のK-BOOKフェスティバルで何より楽しみにしているハン・ガンさんのトークイベントですが、その一番有名な著書の日本語翻訳すら私は数年間知らないまま過ごしていたのだなあと驚きました。そして改めていま日本語で読める韓国文学がたくさんあることを喜ぶと同時に、どうかこれが一過性のブームで終わらないようにと願うばかりです。

さて、イベントレポートの方を進めます。開始時刻になり司会者の挨拶がはじまり、受賞者の皆さんの顔が見えました。よく見ると永江朗さんや山下優さんがいらして、審査員の方も出席されていることがわかりました。限られた時間内での進行ですが、もしできることならばはじめに出席者の紹介、または画面上の紹介など工夫があると親切だと思いました。

続いて韓国文学翻訳院院長の挨拶が流れました。はじまりからお声が聞こえず、自分の使用機器の不調を疑いしばらく設定を確認したりと戸惑いましたが、取り急ぎ字幕を追うことに。挨拶が終わった後に「お声が繋がらなかったので最後にもう一度流します」と説明があり安心しました。音声不具合や原稿行方不明などのトラブルが重なり会場の緊張感が伝わってきて、オンラインイベントに慣れていない私にとってはそれもライブ感があり新鮮でした。

いよいよ最優秀賞の方から順に表彰、受賞者の喜びの声、出版社からのお祝いの言葉の紹介です。
中央駅』で最優秀賞を受賞された方は八戸ブックセンターから授賞式に参加されていましたが、まさにその八戸ブックセンターでの昨夏のイベントがきっかけで韓国文学に出会い、本をより深く読むいい機会を得られた、韓国文学の良さを話し合える仲間を増やしていきたいとお話されていました。私自身、書店でのイベントがきっかけで読書の新しい楽しさを発見した体験があるので、深く共感しました。
あの夏のソウル』で優秀賞を受賞された方は、韓国のドラマや映画が好きでより理解を深めるために本を読んだ、『あの夏のソウル』を読むとその時代のドラマを見た時に感動が違う、周囲の人にも伝えていきたいとお話しされていました。『広場』でクオン賞を受賞された方も、若手作家の作品を読んだり映画を見たりする中でそれらのルーツに興味を持ち、『広場』という作品を手に取ったというお話でした。一つ前の古家正亨さんのプログラムで「K-POPとK-BOOK」のお話を聞いたばかりでしたので、やはり映画や音楽から本へという流れはたしかにあるのだなと納得し、日本における韓国文学の受容はこの先ますます源流をたどる方向へ、文学以外にも人文書の翻訳も増えていくのかななどと期待が膨らみました。

受賞者の方々は皆さんご自身の体験に基づいたお話をされていて、画面越しに聞いている私は友人の話を聞くようにじっくり聞き入り、何度も頷き共感し、お祝いの気持ちでいっぱいになりました。皆さんが受賞の喜びを語るとともに「周りの人に伝えたい、一人でも多くの人に読んでもらえたら」という気持ちを語っていたのが印象的で、読むだけでは終わらない、読み、書き、伝える、レビューという行為自体にも興味を持ちました。

出版社の編集担当者のお祝いの言葉からは、本を選んでくれたことに対する感謝、「受賞者のレビューを読んで自分の方にも新たな気付きがあった、感動があった」という思いが伝わってきて、とても良かったです。もし編集担当者の方も出席されていてご本人の声で同じ言葉を聞いていたら、涙が溢れただろうなと感じました。

最後に審査員の方からのメッセージがありました。一人目の鵜飼さんはお声が少し遠かったのと、司会者のいる会場で別の音声が流れたのとでほぼ聞こえず残念でした。文字情報で構いませんので、後日どこかで読むことができたらうれしいです。
審査員二人目の青山ブックセンターの山下さんからは「ブームで終わらせないために書店が最前線でありたい」という言葉があり、出版社、書店、読者がそれぞれの場所で韓国文学に向き合っているのだなとうれしくなりました。
審査員三人目の永江さんからは昨今のK文学の傾向や今後の期待について語られ、勉強になりました。最後に「残念なこと」として受賞者5名がすべて女性、審査員3名がすべて男性であることに触れ、「男はK文学を読まないのか、男も読んでくれよ、来年は男性も最終選考にノミネートされるようにがんばって」とメッセージがありましたが、個人的には現代社会の問題を深く捉えるK文学のレビューコンクールにおいて審査員がすべて男性であることの方に残念な気持ちがありました。

受賞者のレビューはK-BOOK振興会のサイトで読めるようになっていますので、「周りの人に伝えたい、一人でも多くの人に読んでもらえたら」という受賞者の皆さんの気持ちが多くの方に届くといいなと思います。

(レポーター:北島あやこ)

 

 

共催


主管:K-BOOKフェスティバル実行委員会
後援:一般財団法人日本児童教育振興財団、
公益財団法人 韓昌祐・哲文化財団、
アモーレパシフィック財団、韓国文学翻訳院、
株式会社クオン、永田金司税理士事務所