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2020.12.11
イベントレポ:ヨジョ(요조)のトーク&ライブ

シンガーソングライターで作家、そして済州島で書店「本屋無事(책방무사)」を運営するなど、多彩な活動で自身の言葉を届けるアーティスト、ヨジョさん。来年初めて著書が邦訳出版されるのを前に、ソウルのスタジオと繋いでトーク&ライブを行いました。

2007年から本格的に音楽活動を始めたヨジョさんは、作家としても数々の媒体に執筆。これまでに著書として絵本、書評集など6冊を発表し、エッセイ『아무튼 떡볶이(とにかくトッポッキ)』(原題)が2021年2月にクオンから発売される予定です。
ヨジョさんを日本の視聴者にもっと知ってもらうため、質問に答えていただく形でお話を伺うと、終始穏やかな口調で、言葉を大切に選ぶように語ってくれました。

まずは著書『とにかくトッポッキ』について。韓国のソウルフードとも呼ばれるトッポッキの本ですが、単なるグルメ本ではないのがこのエッセイ。トッポッキを食べながら過ごした人生のあらゆる場面を記したその中身は、ヨジョさん曰く「自叙伝」のような仕上がりに。韓国の読者からは、いい本だったと言う人も気に入らなかったと言う人も、一様に「予想とは違う内容だった」との反応が返ってきたといいます。そのフィードバックは「人々の予想を裏切ることに喜びを感じられる芸術に携わる人間としては、望ましい反応だった」と話しました。
日本で出版されると聞いた時は、嬉しい一方で「日本でトッポッキがどんな意味を持って捉えられるのか、日本の食べ物でいえば何に例えられるかと気になり訳者にも聞いてみたけれど、お互いに首をかしげるばかりでいまだに答えは出せていない」と笑って答えました。

『ヨジョ』という芸名についても伺いました。実は太宰治の小説『人間失格』の主人公、大庭“葉蔵”が由来。ヨジョさん曰く「遅れてやってきた思春期」だったという20代前半に同書と出会ったといいます。「葉蔵がもつ、弱々しい人間の断面が自分と重なった。彼の弱さ、人から愛されたいと願う姿が人ごとではない気がした」と、強い共感の思いをもって読んだ当時を振り返りました。「葉蔵という名前が出るたびに鉛筆で丸をつけながら読んだ」といい、そうして心に刻まれた名前は、芸名を考える際に自然に候補にあがったと言います。

5年前にソウルで書店を始め、現在は移住先の済州島で運営を続けるヨジョさん。自身の書店を持つことは長い間持ち続けていた夢だったとのこと。歳を重ねたあと、いつかやってみたいと思っていたけれど、せっかくなら今やったらどうかとの友人たちの後押しもあり「流されやすいわたしはやや衝動的にオープンした」と説明しました。本の品揃えはヨジョさんの興味関心がそのままあらわれ、「今まさに知りたいこと」が本棚に映し出されているといいます。以前は詩やフェミニズムに関する本などが多かったのが、最近は「環境問題や生態、ヴィーガン。そして女性だけでなく子ども、高齢者、障害を持った人々など、弱い立場にいる人たちの本が増えてきた」と紹介しました。

トークの後はアコースティックギターを手に、長年舞台をともにするギタリストのホ・セグァさんも加わってライブがスタート。どんなに愛しあう者同士でも互いの全てを知ることは不可能だという“関係の限界”を歌詞にし、ファンからも特に愛されてきた曲『私たちは線のようにじっと横たわって』や、外見も中身も可愛らしいおばあさんになりたいと願う『老い』など、全5曲を披露しました。

ライブを終えると、「いつかオンラインではなく、みなさんと実際に眼差しを交わし合いながら、歌える日が来ることを心から祈っています」とメッセージを送ってくれました。

(レポーター:澤田今日子)

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