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2020.12.02
イベントレポ:キム・スヒョン作家に聞く―「私は私のままで生きることにした…いけど」

イラストエッセイ『私は私のままで生きることにした 』が大ヒット中の新進気鋭の作家キム・スヒョン さんと人気韓国ブロガー&YouTuberのこりあゆさんが、K-BOOKフェスティバル初日(11月28日)のトリとして登場。「私は私のままで生きることにした…いけど」と題し、日韓の狭間に生きる若者代表として、また作家と同世代の一人の女性として直球トークを繰り広げました。また、モデレーターに韓国語学習者に人気のゆうきさんこと稲川右樹准教授が登場し、対談と視聴者をつなぎ、場を盛り上げました。


■キム・スヒョンさんはさまよわない人?
こりあゆ(以下「あゆ」):私も読んで、本当に共感することばかりだったキム・スヒョンさんの本『私は私のままで生きることにした』(以下『私は私~』)からお聞きします。まず、私自身の経験にも当てはまった「不安だからと手当たり次第にやらない」というコラムから伺いたいのですが、どういうきっかけでこの気づきを得られたのでしょうか。
キム・スヒョン(以下「スヒョン」):私も20代の頃にはスペイン語を2か月間だけ勉強するなど、焦って手当たり次第にやっていました。学んでおいて無駄になることはないとは言われますけど、時間という資源はとても限られたものなので、そのせいで本当にやりたかったことの優先順位が下がってしまったと後から気づいたんです。もちろん何かをやっていれば頑張っているという安心感は得られるのですが。だから、手当たり次第に進めていくのではなく、時々は、どこに向かっているのか自分自身で立ち止まってしっかり考えてチェックをするということがとても大事だと思います。私も20代の頃はいろんなことを迷い、ずっとさまよっていた気がします。
あゆ:私、いま韓国の年齢で28歳だからまだまださまようんだ……。
スヒョン:さまよいも大事ですよ! 寄り道をしたりすることで、自分の人生やこれからどう生きるかについて知るきっかけにもなりますし。これから先どこに向かっていくのかという悩みは一生付きまとうものでしょうが、20代って選択肢も多い分、さまよいながら考えることが大事なんだと思います。

■キム・スヒョンさんは信念の人なのか?
あゆ:「全ての人に愛されようとしなくていい」という部分も共感しました。私は、相手に理解されないと、悔しかったり自分が間違っているのかとすごく弱っちゃうときがあるんですよ。『私は私~』を読んでいると、スヒョンさんがすごく精神的にしっかりしていると思えて。自分を保つ秘訣ってあるんでしょうか?
スヒョン:私の場合は、自分の人生の基準を出来る限り自分の内面に定めておくということを心がけています。周りから非難や批判を受けたときに、感情的に対応するのではなくまず一度受け止めてみて、冷静によく考える。それと同時に、ネガティブな言葉に惑わされないように、自分の中に判断の主導権を持つようにしています。他人は好き勝手なことを言うものなんです。
稲川右樹(以下「ゆうき」):スヒョンさんのその信念はどこから来るんでしょうね?
スヒョン:信念があるからと、それだけが正解みたいに突き進んでしまうと問題となりますよね。自分自身の信念の枠組のようなものを持ちつつ、自分でもそれをチェックしていく過程も大事。ただ、聞こえてくる周囲の声を減らすようにはしています。惑わされたり迷ったり、そういう試行錯誤があったことによって自分の信念もより強いものになっていった気がします。

■キム・スヒョンさんのコンプレックス対処法
あゆ:後遺症の残るお母様のことを書いた「恥じる必要のないことを恥じない」のコラム。私自身、持病のコンプレックスがあることもあって、このコラムを読んで思わずウルッと来ちゃいました。
スヒョン:私がこのコラムで指摘したかったことは、多くの人々が、恥じる必要のないことに対して恥ずかしさを感じてしまっているということです。じゃあ、どうしたらそれを克服するのかというと、たとえば、羞恥心や劣等感といったネガティブな感情が雑草だとしたら、庭園に雑草が生えてこないようにするのは難しいですよね。けれど、どんどん生えてくる雑草を抜き取ったりして庭園が雑草に覆い尽くされないようにしようということが、心構えとして大事だと思うんです。上手に管理していけば、ネガティブな感情が心に留まる時間が短くなって、将来的には徐々に克服されていくのではないでしょうか。

■新作は、人と人との“関係”について
ゆうき:『私は私~』の次の本ももうすぐ日本版が出るそうですが、どういう内容ですか?
スヒョン:『頑張りすぎずに、気楽に』というタイトルで、韓国では今年の5月に出た本で、“関係”について書いた本です。日本も韓国も人間関係による圧迫が大きい社会だと思います。人間関係からくるストレスに悩んでいる皆さんの役に立って、皆さんが少しでも気楽になってくれたらいいなと思います。


20代の頃はずっとさまよっていたし、最近でも気乗りしない頼まれごとを断ることに1年もかかったと言うキム・スヒョンさん。イベント後半では、視聴者からの質問にも答え、「執筆に集中できるのは締切日が設定されてから」と茶目っ気たっぷりに答えたり、こりあゆさんと和気あいあいとお話しされる姿など、著書から受ける力強い印象とはずいぶんと違った柔らかい印象を受けました。モデレーターの稲川教授も「キム・スヒョンさんも、ちゃんと迷ったり、揺れ動いたりする人なんだなあ」としみじみと感想を述べるほど、とても人間くさい面も見せてくれたオンラインイベントでした。

韓国で100万部、日本でも40万部を超える異例の大ヒットとなった『私は私のままで生きることにした』に続く新刊『頑張りすぎずに、気楽に』(ともにワニブックス)の日本語版は12月11日に全国の書店で発売です。
(レポーター:岡崎暢子)

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共催


主管:K-BOOKフェスティバル実行委員会
後援:一般財団法人日本児童教育振興財団、
公益財団法人 韓昌祐・哲文化財団、
アモーレパシフィック財団、韓国文学翻訳院、
株式会社クオン、永田金司税理士事務所